舞台は生きている
「Untitled」カンパーイ!
舞台「アマデウス」観劇日誌
2017年10月8日。私は満を持して池袋に降り立ちました。何を隠そう、九代目 松本幸四郎として最後となる「アマデウス」を観劇するためです。主演のサリエーリに松本幸四郎、モーツァルト役に我らがジャニーズWEST 桐山照史、コンスタンツェ役に大和田美帆がキャスティングされる大変豪華な舞台。初日から15日が経ち、次の日が東京千秋楽。逸る気持ちを抑えながら劇場へと向かったのでした。写真撮るのへたくそか。
私と舞台
学生時代は、よく地元に演劇教室なるものが来て県民会館まで見に行かされたものだ。(私は睡眠時間としか捉えていなかった)中学生の時に見た「杜子春」がとても笑えてテンポ感もよく、すごく楽しかったことを覚えている。たぶんこれ。
小学生の頃、劇団四季の「ライオンキング」を見た。漠然と面白い舞台だと思った。有名なミュージカルってやっぱりすごいんだなと。人を惹きつける何かがあることは幼い私にも分かったのではないだろうか。高校生になって、ミュージカル「テニスの王子様」にハマって一度だけ見た。(これ面白かったけど、今考えるとこれは全く別のカテゴリだよね。こんなこと言ったら怒られるけど、レベルの差がすごい。そりゃ若手俳優の登竜門だからゴニョゴニョ…)高校の終わりには地方公演にきた「美女と野獣」を見に行った。小学生以来の劇団四季で、音楽高校に進学し歳を重ねた私にはどう見えるのかすごく楽しみだった。「美女と野獣」はアニメ映画でもストーリーに感動して涙を流したけど、舞台版はBe our guest!のステージパフォーマンスに圧倒されて泣きそうだった。歌がすごい。重厚感があるアンサンブルとか、圧倒的なベルの歌声とか、あの狭いホールいっぱいに鳴り響く歌声は心を揺さぶられた。
舞台「アマデウス」演者の本気
結論から言うと、私が今まで見た舞台の中で一番よかった。すっごく笑って、ボロボロ泣いた。あの時間だけは、まるで感情を支配されたようだった。
モーツァルトは遊び人だ。自分の生徒には片っ端から手を出し、サリエーリの愛弟子にも手を出した。スタンツェと恋仲になってからは、おしりにキスしちゃうぞだのおしっこなめちゃおだのとんでもなく下品な言葉を言いまくるが、明るく下品で最高に笑えた。スタンツェの足の長さを図ろうと企むモブ男を見た時にはヴォルフィの嫉妬が爆発している。*1
自分がただの凡人で、モーツァルトが天才であると気づいたサリエーリは嫉妬心からモーツァルトを陥れようと企む。サリエーリの意のままに陥落して行くモーツァルト、それでも生まれる天才的な楽曲たち。人間の嫉妬は、人の心を殺す。
- アントニオ・サリエーリ/松本幸四郎
本物の役者を見た。勤勉な努力家だが凡庸な曲しか書けない宮廷音楽家だったサリエーリが、ヴォルフィの才能に嫉妬して追い詰められて行く。人間臭いサリエーリはある種の恐怖を感じた。私たち誰もが持つ感情が相手も自分も蝕んで行く。幸四郎さんの演じ方はただ覚えて演技しているのではなかった。「要は心に響く言葉だからね。」その考えの通り、役に入り込み、こちら側の心を容赦なくえぐってくる。モーツァルトを追い詰めるシーンでは私も手を握りしめて見ていたほどだ。
「10年間の私の憎しみが君を蝕み死に至らしめるのだ」
「神?神が助けてくれるものか。神は人を助けはしない」
私が知るジャニーズWESTの明るく面白い照史ではなく、俳優・桐山照史だった。舞台上の照史は、演じることをとても楽しんでいるように見えた。ライブとは違う輝きがあったと思う。少年心溢れるヴォルフィとひらめきが降りた時の天才作曲家ヴォルフィ、子供っぽさをにじませる時と音楽を楽しむ顔。早口のイタリア語、スタンツェに贈る「結婚して」の一言、死に際「僕の名前を呼んで?」ってスタンツェに願う優しい表情。コロコロ変わる気持ちに対する照史の表情と声の変化が、まるで私もその中にいるかのように思わせてくれる。
身体を蝕まれ、灰色の仮面の男の悪夢を見るヴォルフィ。必死に書いたレクイエムを素晴らしいと評価した仮面の男はサリエーリで、さらなる絶望へと歩を進めるヴォルフィ。追い込まれた末に出る悲痛な叫び
「パパーーーーー!!」
サリエーリをパパだと思い、「抱っこして?」とせがむシーンの悲しさ。
全てが素晴らしかった。照史が演じてるからなおさらヤバかった。
カーテンコールで、とっても清々しい顔で客席を仰ぎ見る照史を見て、涙が出た。すごくいい顔してたよ。あのカンパニーの中に照史がいる。最高だ。照史には今後も舞台にで続けて欲しい。生きてる!!って感じするもん。
余談ですがサリエーリが作った曲をヴォルフィが即興で編曲するシーンがあるんですが、散々どこがつまらないかを喋った最後に「とにかくドミナントとにかくドミナント!」っていう台詞があって、あ〜音高通ってて良かった〜〜って思いました(笑)ドミナントなんて音楽やってる人にしか分かんないよなあと思いつつ、懐かしくなりました(笑)
- コンスタンツェ役/大和田美帆
何に驚いたって顔の小ささにまず驚いた(笑)ケラケラ笑って「最っ高!」って言い放つスタンツェ、最高に女だった。じゃじゃ馬娘そのものって感じだった。「あなたと結婚したあの日、あれは私にとって生涯最良の日だった」このセリフひとつのために、それまでのスタンツェの振る舞いはあるのではないだろうか。何を言われても、どんなに厳しい生活を強いられても、スタンツェはヴォルフィと一緒だった。一度は子供を連れて家を出てしまったけど、最後は戻って来るスタンツェ。「ヴォルフィ、死んじゃ嫌!」辛くて涙が溢れたシーンだ。
「神を嘲るなかれだと、とんでもない、その前に人を嘲るなかれだ」
幸四郎さんの想い
先日情熱大陸で幸四郎さんが取り上げられていた。語られる想いがグッと来たので、取り上げておく。
「要は心に響く言葉ですよね。言葉・台詞は、現代の演劇も軽んじてるとまでは言わないけどあんまり意味を持ってない。ビジュアル的に、視覚的にハッとするものの方が現代には(多い)。ちょっと寂しい」
この記事 1ヵ月も温めてしまった、、(笑)
*1:「君が人前で安っぽく扱われたくなかっただけなんだよ」